AILA第3回全国大会(平成26年3月16日、於慶應義塾大学日吉キャンパス)のご報告をさせていただきます。今大会も多くの方にご参加いただきましたこと、心よりお礼申し上げます。
当日行われました研究発表、講演、シンポジウムの様子を紹介させていただきます。
以下に、プロシーディングズも掲載しておりますので是非ご覧ください。
なお、JAILA第4回全国大会は、平成27年3月14日(土曜日)に岡山大学にて開催
されることになりました。皆様のお越しをお待ちしております。
※ プロシーディング、発表資料はPDF形式となっております。ご覧いただくためには、PDF閲覧用ソフトが必要です。下表のBrowseボタンをクリックしても表示されない場合は、以下のアドビシステムズ社のサイトからPDF閲覧ソフト(Adobe Reader)をダウンロード、および、インストールしてください(フリー)。
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題目 |
発表者 |
プロシーディング |
発表資料 |
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「外国語学習の「達人」に学ぶ」 |
那須 雅子 |
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本発表では、第二言語を高度なレベルまで習得した「達人」に対して実施したインタビューの分析結果を紹介し、この成功例が示す教育的示唆について考察する。特に日本語と英語の間に必然的に存在する言語および文化的相違を「達人」が如何に克服しているかに焦点を当て、多読などの具体的な学習法の有効性について論じたい。また「グローバル人材」として活躍するためには外国語を用いて「話す力」と「書く力」は必須と考えられるが、このような発信力を身につけるために有効な学習法について、現代の「達人」の実体験に基づいて考察する。 |
2 |
「階層別偏差値平均に基づく偏差値補正について」 |
脇坂 幸雄 |
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標準偏差を用いて母集団の中における位置を数値化して示す「偏差値」が、受験者の学力の尺度として使われるようになって久しい。その問題点については色々と指摘されながらも依然として「偏差値信仰」は収まってはいない。今回は「わかっていないのにカンで当たって正解」「わかっているのに時間切れで誤答(無答)」となったケースについて考察し、それを踏まえた上で「偏差値を補正する」という試みについて発表する。 |
3 |
「元同志社大学教授Lindley Williams Hubbell氏の薫陶」 |
森永 弘司 |
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元同志社大学教授Lindley Williams Hubbell氏はガートルード・スタインと親交のある詩人であり、シェークスピアの全作品を一字一句間違えることなく諳んじることが出来た異能のひとであった。高卒で学問的業績がなかったのもかかわらず英文学科の専任教員に採用され、多くの優れた英米文学者を育てた。アメリカ文学者として令名の高かった故金関寿夫氏はHubbell氏が死去した際に、「彼はぼくらの良心だったな」と語った。今回の発表では同志社大学の原点である良心教育において寄与するところの大きかったHubbell氏の事績を紹介したい。 |
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「ベトナムの家族変動と高齢者扶養-法的規定と高齢者サポートネットワークの動揺」 |
佐藤 宏子 |
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本発表では、ベトナムの人口・社会経済状況、家族の特徴とドイモイ政策以降の家族変動を概観した上で、「婚姻家族法」と「高齢者法」に規定されている高齢者扶養について分析検討する。また、ハノイ市郊外に居住する在宅療養高齢者の調査研究をもとに、ベトナムにおける法的な親子関係の基本原則が子世代・孫世代にどのように浸透し、高齢者生活を支える家族・親族・近隣によるインフォーマル・サポートネットワークを形成しているのかを明らかにする。さらに、飛躍的な経済成長、2020年代後半から顕在化する少子高齢化が、高齢者扶養のための人的資源の縮小、家族・親族・近隣による互助機能の弱化を招いていく過程について考察する。 |
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「バタイユ思想に倫理はあるのか」 |
横田 祐美子 |
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本発表は、死とエロティシズムの思想家として広く知られているジョルジュ・バタイユの思想のうちに倫理的側面がみられることを明らかにする試みである。一見すると、バタイユ思想は暴力や禁止に対する侵犯を称揚するものであり、海外の二次文献(ex: Edith Wyschogrod, Saints and Postmodernism, The University of Chicago Press, 1990)においてもバタイユ思想には倫理が欠如しているという指摘がなされている。しかし、バタイユは自身の思想を常に他者に開かれたものとして構想しており、発表者はそのような点に注目することで彼にとって倫理とは何かということを提示したいと考えている。 |
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「Daddy-Long-LegsにおけるJerushaの「教養」」 |
中村 祐子 |
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Jean Webster(1876-1916)のDaddy-Long-Legs(1912)は、孤児であるJerushaが彼女を大学に進学させてくれた上流階級の慈善家と結婚するシンデレラ物語である。Jerushaは読書で教養を身に着けることで幸福を掴む。Jerushaの手紙で描かれる大学生活は、作者の出身校であり、Liberal Arts教育の名門校であるVassar Collegeがモデルである。Daddy-Long-Legsは理想の教養を身に着けるための指南書でもあったと考えられる。本発表では、Jerushaの読書履歴と手紙の文体から彼女が普通の女子大学生に追いつき追い越して成長する過程を分析し、当時の「女の子」の教養が何であったのかを明らかにする。 |
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「グローバルな人材育成に向けたノンバーバルコミュニケーション教育の重要性~美しい姿勢と歩き方を身につけることの効果~」 |
奥谷 昌子 |
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海外では、姿勢や立ち居振る舞いからレストランで案内される席が変わるといわれるほど、ノンバーバル(非言語)コミュニケーションがもたらす印象への影響が大きい。国際社会で活躍するグローバルな人材を育成するには、英語といったバーバル(言語)コミュニケーション教育の強化と同時に、姿勢や歩き方などの立ち居振る舞い、すなわちノンバーバルコミュニケーション教育の強化も重要であると考える。美しい姿勢と歩き方を身につけることの多様な効果について考察し、これからのグローバル人材育成への新たな教育プログラムの1つとして提案したい。 |
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「アメリカでの日本語教育の発展を目指して〜ALLEX の取り組み〜」 |
瀬川 仁美 |
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ALLEX(Alliance for Language Learning and Educational Exchange)は、アメリカにおける日本語教育の発展を目指して1988 年に設立されたNPO 団体です。アメリカでは日本語教育に関する高い知識と技術を身に付けた日本語講師を派遣するプログラムとして、そして日本では、授業料全額免除などの奨学制度を備えたアメリカ大学院留学プログラムとして周知されています。今発表では、過去25 年に渡るALLEX の活動とALLEX 派遣生の活躍についてご紹介します。 |
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「「グローバル人材育成と大学教育改革再考」― 一年の在外研究から見えたもの―」 |
奥 聡一郎 |
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近年、「グローバル人材の育成」の名の下に大学教育改革が進み、昨年度のシンポジウムで取り上げられたように各大学の取組みの成果が現れてきている。この流れは小学校の英語教育の本格的導入など小中高にも及んでいるが、このような「グローバル人材の育成」に対して内向きとされる最近の学生の意識や動機付けについての分析が基礎資料として必要になると思われる。本発表では、大学生の意識調査をもとに情報化への対応、必要とされる新しい教養の形、教育施策を再検討する。また、在外研究で見聞したグローバル人材の実例、留学生、海外語学研修の様子なども踏まえ、留学に求められることを教育制度の観点から示したい。 |
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「Reflections on the Humanistic Approach: From Philosophy to Practice in EFL Settings」 |
宇野 光範 |
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Japanese trends in EFL settings have changed rapidly toward the communicative approach, and holistic view in humanism has become common in our teaching environment. The transition makes us natural to assume that the core essence of humanistic approaches evolved in the 1970s has been dissolved into contemporary EFL methodology. However, by philosophically revisiting the humanistic approach, we would examine certain crucial values from the original approach in terms of existential perspectives of both a learning student and a developing teacher. Also, by sharing classroom practices held in different EFL contexts, we shall review the importance of making links between ideology, theory, and practice in language teaching. |
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「Winning Hearts and Minds at a Japanese University Through an English Literature Lecture Course」 |
Mark D. Sheehan |
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The presenter will discuss a Survey of British Literature Course taught all in English to second- and third-year Japanese university students. The presentation will include a discussion of course materials, which encompass an online component, note-taking worksheets, and previewing and reviewing exercises. Throughout the semester, students were given surveys to measure their understanding of the lectures and check retention of course content. An analysis of the results from these surveys will conclude this examination of different approaches to promote liberal arts education while addressing student needs in content-based English courses, and in particular the use of literature to teach cognitive thinking skills and English as a second language. |
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「Indirect Feedback in Teaching Writing: Do Error Codes Help Learners Make Their Output More Comprehensible?」 |
岩中 貴裕 佐藤 誠子 |
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The purpose of this study is to answer the following two research questions:
1. Are error codes accepted by learners favorably?
2. Do error codes contribute to the development of learners’ writing proficiency?
Error codes are a kind of indirect feedback used to direct learners’ attention to their errors. They provide learners with opportunities to reprocess their output and make it more comprehensible. This process is considered to bring about their IL development. The authors have been using error codes in their writing classes and conducting research to clarify how they would contribute to learning. The participants are undergraduate students who are not majoring in English. They took writing classes which were taught by the authors. A questionnaire was given to evaluate what they had thought about the error codes. To evaluate their writing proficiency, the e-rater scoring engine was employed.
The results are: 1) error codes were accepted by the participants favorably and 2) error codes contributed to the development of the participants’ writing proficiency. It can be concluded that rewriting based on indirect feedback constitutes important part in the process of L2 learning.
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「コミュニケーションが止まらない―コーパス言語学的手法で読む1980年代イギリスの外国語教育言説―」 |
北 和丈 |
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雑多な言説が飛び交う外国語教育という領域において、その意思疎通の困難さを最も顕著に示す用語が「コミュニケーション」であるとすれば、あまりにもよくできた皮肉である。この用語が英語由来のカタカナ語である以上、その混乱の原因を特定するには、採り入れた日本の側のみならず、供給した英語圏の側にも目配せをしておく必要がある。本発表は、イギリスの英語教育関連誌を素材とした自作電子コーパスの分析から、この問題への実証的な手がかりを得ようとする試みである。 |
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「外国語指導助手の語りを通したアイデンティティ変容に関する研究」 |
坂本 南美 |
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本発表は、日本の公立中学校に勤めるAssistant Language Teacher(ALT)の語りに関する一考察である。ALTとして招致される英語母語話者によって、日本の小、中、高等学校では、ALTと日本人英語教師によるティームティーチングが可能となった。日本の学校という新しい環境の中で、英語教育に携わり、彼らは教室でどのように自らのアイデンティティを確立していくのか。本研究では彼らの語りや綴られたナラティブを社会文化的視座から質的に分析し、教師としてのアイデンティティの変容を明らかにする。 |
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「多読活性化のためにフィンランド教育から学ぶ:マインドマップ実践報告を中心に」 |
深谷 素子 草薙 優加 小林 めぐみ |
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本発表は、フィンランド視察より得た知見に基づき、停滞しがちな英語多読の活性化のため、多読授業にマインドマップを導入した実践報告である。とはいえ、マインドマップのみがフィンランド教育の真髄というわけではない。むしろ、マインドマップをその一例とする自律学習という大きな枠組みにこそ目を向けるべきだと考える。そこで、本発表ではマインドマップに加えて、学習者に自律学習を促すべく導入した他の工夫(振り返りシート、ワールド・カフェなど)についても紹介したい。 |
講演 |
「読書と教養の文化史―A・マングウェル著『読書の歴史』を参照して」 |
原田 範行 |
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Readingという行為は、古今東西、情報の受信と発信にかかわる人間の教養を端的に表す機能として重視されてきました。船乗りが潮の流れを読む。占星術師や批評家が時代を読む。ディッケンズをはじめ作家が自作を声に出して読む。古代アレクサンドリアの図書館では書物を声に出して読んだ閲覧者たち。黙読とプライベートな空間での読書が一般化した近代の読者たち。紫式部をはじめとする中世日本の読書する女性たち。読書を禁じられたアメリカの奴隷たち―『バベルの図書館』で知られるボルヘスの晩年の知的活動を共有したマングウェルの『読書の歴史』を参照しつつ、<読書>と教養と、そしてそれらが機能する磁場を多角的に考察したいと思います。 |
シンポジウム |
「国際社会を生きる―“日本発”グローバル発信例に学ぶ」 |
山中 祥弘 山下 真弥 寺西 雅之 |
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日本国際教養学会は、設立以来「グローバル人材」育成の重要性とその具体的方策を追究してきた。これまでの成果を踏まえ、本シンポジウムでは多様な分野での「“日本発”グローバル発信例」を取り上げ、国際社会において日本が主体的な役割を果たすために必要な能力、戦略、心構え等について具体例を交えて論じていきたい。
山中祥弘氏は、ビューティビジネスの可能性について国際的視点から論じる。日本のビューティビジネスは、消費者ニーズの高度化・多様化をリードし新たな市場を創造し、9兆円市場にまで成長、現在その技術は世界トップレベルにある。そのため海外の日本に対する関心は高く、ハリウッド大学院大学では、多国籍・多数の留学生が美容の技術と経営を学び、さらに海外大学との交流も活発となり、グローバル化は加速している。本シンポジウムでは、その現状について紹介する。
山下真弥氏は、世界80か国以上に販売網を持つ米国出版社との契約を得た経験をもとに、2冊の自著の翻訳出版に至るプロセスや、米国スタッフとのコミュニケーションの重要性とその内容についても取り上げる。また、ビジネスモデルが十分に確立されていない電子書籍業界に関する最新情報と経験を織り込みながら、電子書籍が国内の書籍業界へ与える影響など今後の新しい出版の在り方についても議論していく。
寺西雅之氏は、Palgrave Macmillanより出版予定のLiterature and Language Learning in the EFL Classroom(寺西雅之、斎藤兆史、Katie Wales編著)を取り上げ、その企画から出版決定までのプロセスを紹介し、“日本発”の海外向け出版の重要性と今後の課題・可能性について論じる。
後半のパネル・ディスカッションおよび質疑応答では、フロアも交えて様々な「“日本発”グローバル発信例」について情報・知識を共有し、国際社会における今後の日本の役割について議論を深めていきたい。
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