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JAILA設立総会、および、研究発表会のご報告

 去る平成23年9月25日、兵庫県立大学姫路新在家キャンパスにおいて、日本国際教養学会(JAILA)の設立大会が開催されました。当日は50名を越える方々にお越しいただき、大変な盛会となりました。

設立総会
(設立総会の様子)

 市川一夫副会長の開会の辞に引き続き、総会が行われました。まず清原正義会長よりあいさつがあり、本学会設立の経緯と目的、そしてその意義などが説明されました。次に、規約の確認と承認、学会役員の紹介、そして会計報告が行われました。引き続き、今後の運営と活動について話し合われ、大学・研究機関に限らず、学校関係者や国際交流団体など様々な立場の一般市民の参加を募ること、多様な分野に属する方々の交流を目指すこと、日本各地に支部を設けるなどして全国規模での活動を目指すこと、若手研究者の研究発表と交流の場を提供すること、などが確認されました。またJAILA第1回全国大会と特別シンポジウム「今日本の国際化と日本人の教養を考える」(講師・パネリスト:斎藤兆史氏(東京大学教授)、ダイアン吉日氏(英語落語家)、清原正義氏(日本国際教養学会会長・兵庫県立大学学長))が、3月17日(土)に兵庫県立大学神戸学園都市キャンパスにて開催されることが発表されました。

会長挨拶
(清原正義会長より挨拶がありました。)

設立総会参加者全体写真
(参加者全体写真)


研究発表のご報告

 

 総会に引き続きJAILA初の研究発表が行われました。第一発表の「英語教育再考:日本社会の国際化と英語教育の重要性について」(発表者:兵庫県立大学准教授 寺西雅之)では、1990年代以降の日本の英語教育の流れが、日本社会のグルーバル化とその反応、コミュニケーションツールとしての英語の役割、そして日本人英語学習者の特性などに基づいて考察され、今後の大学での英語教育においては、特に「学術目的のための英語」と「留学(異文化の人々との交流のために英語を使用する経験)」が必要であることが強調されました。さらに、英語を習得し英語的なパラグラフ構造を身につけることにより、日本語においてもて論理的に発信する能力が身につくという「波及効果」についても議論がありました。その一方で日本語の持つ「底力」にも言及があり、国際化とは何か、バイリンガリズムとは何かというテーマにつながる発表でした。 寺西雅之氏
(寺西雅之氏の発表)
 第二発表の「ドイツの環境教育と教育改革」(発表者:くらしき作陽大学講師 諸岡浩子)では、はじめに、環境教育の定義や環境教育の歴史的変遷、実践事例から、環境教育の概要について述べられた後、今日の環境教育の国際的な流れについて考察が行われました。次に、学校教育改革の手段のひとつとして行われている、ドイツの持続可能な社会のための教育の事例を通して、これからの環境教育が、これまでさかんに行われてきた環境問題への啓蒙教育ではなく、個人の意識レベルに到達し、生活スタイルの変革を問うような教育内容であるべきということが強調されました。そして、個人の意識レベルに働きかけるために、これから環境教育に求められていることは、文化的資質(教養)を高めていくための議論であり、このことは、本学会のような様々な専門性の学問の融合を試みる学会などで、さらに深い議論が期待できるという発表でした。 諸岡浩子氏
(諸岡浩子氏の発表)
 第三発表の「唾液を増やす(学童期の食育に期待を込めて)」(発表者:山本歯科医院歯科医・大阪医科大学非常勤講師 山本孝文)では、超高齢社会となった現状の日本で、高齢者のQOL(Quality of life)やADL(Activity of daily life)の維持・向上のためには、「一人で出歩ける」「会話を楽しめる」「食べたいものが食べられる」の3つが大切であることが紹介されました。そして、歯科医の立場から食べたいものが食べられるためには、「8020運動」と同時に、唾液の流出量(唾液量)が多くなるような口の状態が維持されていることが、成人においても学童期においても有用であることが示されました。さらに、唾液量を増やすために学童(小学校4年生時)に3ヶ月間のガム咀嚼訓練を行い、その後の唾液量が増加・維持されているという成果の報告は、学童期の適当な時期に、適当な期間、咀嚼訓練を行うことの有効性を示唆するものであり、今後の食育の可能性にもつながるテーマでした。 山本孝文氏
(山本孝文氏の発表)
 以上3件の研究発表に続き、石井隆之近畿大学教授による講演「言語における曖昧性をめぐって」が行われました。石井先生は、言語のもつ「曖昧性」に関して理論言語学的な立場から、原理的に説明されましたが、本講演では「太郎が好きな花子にキスをした」や「Everybody loves somebody」など分かりやすい例文による解説がなされていて、一般には難解な印象のある理論言語学の分野に親しみが湧いてくるようなお話でした。さらに、曖昧性の問題に絡めて、文化や社会との関わりについても考察され、言語学、英語教育以外の分野の参加者にとっても大変参考になりました。 石井隆之先生
(講師の石井隆之先生)

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